医療現場において円形脱毛症の患者さんを診察する際、私たちはまず「これは皮膚の炎症性疾患である」ということを明確に伝えます。一般の方々にとって髪の悩みは何科に相談すべきか非常に不透明な部分が多いようですが、毛髪の生理学、病理学を最も深く理解しているのは皮膚科医です。円形脱毛症の本態は、本来ならウイルスや細菌を攻撃するはずのTリンパ球という免疫細胞が、何らかの理由で成長期の毛包を異物と見なして攻撃してしまうことにあります。この攻撃によって毛の製造ラインが急停止し、髪が根元から抜け落ちてしまうのです。診察では、抜け落ちた毛の根元の形状を確認したり、頭皮の発赤や陥凹をチェックしたりすることで、他の脱毛症との鑑別を行います。例えば、自分自身で髪を抜いてしまう抜毛症や、真菌感染による頭部白癬などは治療法が全く異なるため、これらの見極めが非常に重要です。治療の選択肢は多岐にわたり、軽症であればステロイドの外用やグリチルリチン製剤の内服から始めますが、急速に進行する場合や範囲が広い場合は、ステロイドの局所注射やパルス療法、さらには最新のJAK阻害薬の使用も検討されます。これらはいずれも高度な専門知識を要する医療行為であり、皮膚科以外の診療科では対応が難しいのが現実です。患者さんの中には、メンタルケアを優先して心療内科へ最初に行かれる方もいますが、心身の相関関係は否定できないものの、まずは直接的な原因である免疫の暴走を抑える皮膚科的アプローチが優先されます。また、円形脱毛症には甲状腺疾患や膠原病などが合併しているケースも稀にあり、血液検査等を通じて全身状態を把握できるのも皮膚科受診のメリットです。髪は外見の印象を大きく左右するため、QOLへの影響は甚大です。私たちは単に毛を増やすだけでなく、患者さんの精神的な苦痛を和らげることも使命と考えています。進行を食い止め、再生を促すためには、発症から3ヶ月以内の早期受診が望ましいと言えます。迷わず皮膚科の門を叩いてください。
皮膚科専門医が教える円形脱毛症の仕組みと推奨される診療科