軽度認知障害(MCI)は、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。その原因やリスク因子を理解しておくことは、予防や早期発見につながります。MCIの最も大きな原因の一つは、アルツハイマー型認知症の原因物質の蓄積です。アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβやタウといった異常なタンパク質が蓄積し、神経細胞がダメージを受けることで発症しますが、MCIの段階でも、既にこれらの物質の蓄積が始まっていることがあると言われています。つまり、MCIはアルツハイマー型認知症の前段階である可能性が高いのです。また、脳血管障害もMCIの原因となり得ます。脳梗塞や脳出血などによって脳の一部が損傷を受けると、その部位が担っていた認知機能が低下し、MCIの症状が現れることがあります。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は、脳血管障害のリスクを高めるため、間接的にMCIのリスク因子となります。その他、MCIのリスクを高める可能性のある要因としては、以下のようなものが挙げられます。* 加齢: 年齢とともにMCIの発症リスクは高まります。 * 遺伝的要因: 特定の遺伝子(APOE4遺伝子など)が、アルツハイマー型認知症やMCIの発症リスクと関連していることがわかっています。ただし、遺伝子が全てを決めるわけではありません。 * 生活習慣病: 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などは、脳の健康に悪影響を与え、MCIのリスクを高めます。 * 頭部外傷の既往: 過去に頭を強く打った経験がある場合、MCIのリスクが上昇する可能性があります。 * 教育歴の低さ: 教育年数が短いと、認知機能の予備能力(認知予備能)が低く、MCIを発症しやすいという報告があります。 * 社会的孤立・活動性の低下: 人との交流が少なかったり、趣味や社会活動への参加が減ったりすると、脳への刺激が減少し、認知機能の低下につながる可能性があります。 * うつ状態: 抑うつ気分や意欲の低下は、MCIのリスクを高めるとともに、MCIの症状として現れることもあります。 * 睡眠障害: 質の悪い睡眠や睡眠不足は、脳の老廃物の除去を妨げ、MCIのリスクを高める可能性があります。これらのリスク因子を複数抱えている場合は、特に注意が必要です。
軽度認知障害(MCI)の原因とリスク因子