甲状腺の病気と診断された場合、その治療法は、病気の種類や重症度、患者さんの年齢や健康状態、そして希望などを考慮して、医師と相談しながら決定されます。代表的な甲状腺疾患の治療法について見ていきましょう。1. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の治療: * 薬物療法: 甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬:メルカゾール、プロパジール/チウラジールなど)を内服します。効果が現れるまでに数週間から数ヶ月かかり、副作用に注意しながら長期間服用する必要があります。また、動悸や手の震えといった症状を和らげるために、β遮断薬などが併用されることもあります。 * アイソトープ(放射性ヨウ素)治療: 放射性ヨウ素を内服し、それが甲状腺に取り込まれることで、甲状腺の細胞を破壊し、ホルモンの産生を抑える治療法です。比較的簡便で効果も高いですが、治療後数ヶ月から数年後に甲状腺機能低下症になる可能性があります。妊娠中や授乳中の方、近い将来妊娠を希望する方には適していません。 * 手術療法: 甲状腺の一部または全部を摘出する手術です。薬物療法で効果がない場合や、副作用で薬が使えない場合、甲状腺腫が非常に大きい場合、あるいは早期の治癒を希望する場合などに検討されます。手術後は、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になることがあります。2. 甲状腺機能低下症(橋本病など)の治療: * 薬物療法: 不足している甲状腺ホルモンを補うために、合成甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンナトリウム:チラージンSなど)を内服します。少量から開始し、血液検査で甲状腺ホルモン値を確認しながら、適切な量に調整していきます。基本的には生涯にわたる服用が必要となります。3. 甲状腺腫瘍の治療: * 良性腫瘍の場合: 多くは経過観察となりますが、しこりが非常に大きい、圧迫症状がある、美容的に気になる、あるいは悪性の可能性が否定しきれないといった場合には、手術による摘出が検討されることもあります。 * 悪性腫瘍(甲状腺がん)の場合: がんの種類や進行度によって治療法は異なりますが、基本的には手術療法が中心となります。手術後に放射性ヨウ素治療や甲状腺ホルモン療法、場合によっては分子標的薬や化学療法が行われることもあります。医師から十分な説明を受け、納得した上で治療法を選択することが大切です。