軽度認知障害(MCI)からの回復「治る」可能性は?


軽度認知障害(MCI)と診断された場合、「もう認知症になってしまうのだろうか」「治ることはないのだろうか」と不安に思うかもしれません。しかし、MCIは必ずしも認知症へと進行するわけではなく、適切な対応や治療を行うことで、認知機能が改善したり、現状を維持したり、あるいは正常な状態に戻る(「治る」に近い状態になる)可能性も十分にあります。MCIの段階で早期に介入することが、その後の経過に大きく影響すると言われています。MCIから認知症(特にアルツハイマー型認知症)へ移行する割合は、年間でおよそ10~15%程度と言われていますが、逆に、MCIの状態から健常な状態に戻る人も、年間数%~十数%程度いるという報告もあります。また、MCIの状態を長期間維持する人もいます。MCIからの回復や進行抑制のためには、まず原因となっている可能性のある要因への対処が重要です。例えば、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が背景にある場合は、それらの治療をしっかりと行うことが、脳血管性の認知機能低下の改善につながります。甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症などが原因であれば、それらを治療することで認知機能が回復することもあります。うつ状態がMCIの症状を引き起こしている場合は、うつ病の治療が効果的です。アルツハイマー型認知症の初期段階としてのMCIの場合、現時点では根本的な治療法は確立されていませんが、生活習慣の改善(運動、食事、知的活動など)や、認知リハビリテーション、そして場合によっては薬物療法(アミロイドβを標的とした新しいタイプの薬剤など、研究開発が進んでいます)などを組み合わせることで、認知機能の低下を遅らせたり、症状を改善したりすることが期待できます。大切なのは、MCIと診断されたとしても悲観的にならず、医師とよく相談しながら、自分に合った対策を積極的に行い、認知機能の維持・向上を目指すことです。