多汗症の悩みを持つ方が最初に受診を検討するのは皮膚科であることが一般的ですが、症状の背景や個々の状況によっては、皮膚科以外の診療科が関わるケースも存在します。多汗症は、大きく分けて特定の原因疾患がない「原発性多汗症」と、他の病気や薬の副作用によって起こる「続発性多汗症」に分類されます。皮膚科では主に原発性多汗症の診断と治療を行いますが、続発性多汗症が疑われる場合は、その原因疾患に応じた診療科との連携が必要になります。例えば、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)は発汗過多を引き起こす代表的な内科的疾患です。この場合、多汗症の治療と並行して、甲状腺の専門医(内分泌内科など)による診断と治療が不可欠となります。同様に、糖尿病や褐色細胞腫、末端肥大症といった病気も多汗の原因となることがあり、それぞれの専門医の診察が必要となる場合があります。また、精神的なストレスや緊張が発汗を助長する「精神性発汗」という状態もあります。プレゼンテーションや試験前など、特定の状況で大量の汗をかくといった場合、心療内科や精神科の受診が有効なことがあります。これらの診療科では、カウンセリングや抗不安薬の処方、自律訓練法などのリラクセーション法を通じて、精神的な側面から発汗のコントロールを目指します。ただし、精神性発汗の場合でも、まずは皮膚科で器質的な異常がないかを確認してもらうことが推奨されます。さらに、重度の原発性多汗症で、保存的治療(外用薬、イオントフォレーシス、ボトックス注射、内服薬など)では十分な効果が得られない場合、胸部外科や呼吸器外科で交感神経遮断手術(ETS)という外科的治療が選択肢となることがあります。これは汗を出す指令を送る交感神経の一部を切断または遮断する手術ですが、代償性発汗(手術した部位以外の汗が増える)といった副作用のリスクもあるため、適応は慎重に判断されます。このように、多汗症の診療は皮膚科が中心となりますが、その原因や重症度、患者さんの希望によっては、内科、内分泌内科、心療内科、精神科、胸部外科、呼吸器外科といった複数の診療科が関わることがあります。まずは皮膚科で相談し、必要に応じて適切な専門医を紹介してもらうのが良いでしょう。自己判断せずに、専門家の意見を聞くことが大切です。
多汗症の相談先、皮膚科以外の選択肢は