「お客様、ここに少し髪の薄い部分があるのですが、お気づきでしたか」美容室の鏡越しにそう告げられた時、目の前が真っ暗になるような感覚に陥る人は多いです。美容師さんは毎日多くの人の頭皮を見ているプロですから、初期の円形脱毛症を最初に見つける発見者になることがよくあります。このとき、美容師さんに何科へ行けばいいか尋ねると、ほとんどの方が皮膚科と答えるはずです。それは、彼らが毛髪のトラブルが医学的な処置を必要とすることを知っているからです。しかし、その後「恥ずかしいから」「そのうち生えるだろう」と放置してしまうことが最も危険です。円形脱毛症は、放置しても自然に治るケースが6割から7割程度と言われていますが、残りの数割は進行し、頭全体の髪を失う全頭型へと悪化する可能性があります。特に、脱毛箇所の境界線が不明瞭であったり、周囲の髪を軽く引っ張るだけで抜けてしまったりする場合は、炎症が現在進行形で活発であることを示しており、一刻も早い治療が必要です。皮膚科では、このような「進行の兆候」を逃さず診断します。早期にステロイド薬などで炎症の火消しを行うことができれば、脱毛範囲を最小限に抑えることが可能です。逆に、市販の育毛剤やヘッドスパなどで時間を稼いでしまうと、その間に毛根が深く傷つき、再生までに長い時間を要するようになってしまいます。病院での診察は数分で終わることも多いですが、その数分があなたの髪の将来を左右します。また、一度皮膚科を受診して「円形脱毛症である」という確定診断をもらっておけば、その後、美容室へ行く際も「今、病院で治療中なんです」と胸を張って伝えることができます。美容師さんも事情を知っていれば、患部に負担をかけないカットや、目立たないようなスタイリングの相談に乗ってくれるでしょう。病気であることを隠すのではなく、医療という後ろ盾を持って正しく対処することが、あなたのQOLを維持するために極めて重要です。指摘されたその足で、あるいは翌日にでも、皮膚科を受診するスケジュールを立ててください。それが、健康な頭皮を取り戻すための最良の選択です。