大人がかかるヘルパンギーナは、高熱が出ることが多いとされていますが、中には熱が出ない、あるいは微熱程度で経過するケースもあります。しかし、「熱がないから楽だ」と考えるのは、大きな間違いです。熱が出ない大人のヘルパンギーナは、そのエネルギーが、まるで喉に集中攻撃をかけるかのように、他の症状を、より先鋭化させ、激烈なものにすることがあります。熱がない、あるいは微熱の場合に現れる、主な症状。その主役は、何と言っても「喉の奥の激痛」です。これは、単なる風邪の喉の痛みとは、全く次元が異なります。喉の奥の上顎の部分(軟口蓋)や、のどちんこの周りに、直径一ミリから数ミリ程度の、小さな水ぶくれ(小水疱)や、それが破れた後の、浅い潰瘍(かいよう)、いわゆる口内炎が、おびただしい数、出現します。この無数の口内炎が、焼けるような、あるいはガラスの破片を飲み込むような、耐え難い痛みを引き起こすのです。この痛みは、常に持続し、特に、食べ物や飲み物が喉を通る「嚥下(えんげ)」の際に、激痛となって襲いかかります。そのため、食事はもちろんのこと、水を飲むことさえも苦痛になり、脱水症状のリスクが高まります。また、喉の痛みだけでなく、ウイルス感染による全身症状として、「頭痛」や「関節痛」「筋肉痛」、そして「体中の気だるさ(倦怠感)」といった、インフルエンザにも似た症状が現れることも少なくありません。熱という、分かりやすい指標がない分、この原因不明の体調不良と、喉の激痛が、精神的にも大きな不安とストレスをもたらします。子供の場合は、喉が痛くても、比較的ケロッとしていることも多いですが、大人の場合は、これらの症状の一つ一つが、日常生活や、仕事のパフォーマンスを、根底から奪い去るほどの、深刻なダメージとなり得るのです。熱がないからと油断せず、これらの症状が見られたら、それは、あなたの体が、見えないウイルスと、懸命に戦っているサインなのです。