私の父が急な手術で入院することになった時、最初の手続きで最も驚いたのが「入院預り金として現金10万円を用意してください」という案内でした。日頃の買い物はすべてキャッシュレスで済ませているため、そんな高額な現金を即座に用意するのは簡単ではありませんでした。病院のロビーにあるATMに駆け込み、ようやく用意した10万円を窓口に出すと、引き換えに一枚の「預り金領収証」が手渡されました。事務の方からは、退院時にこの紙がないと10万円を返金できませんので、絶対に失くさないでくださいと非常に強い口調で言われました。父はこれから手術を受けるという不安な状況であり、私自身も看病や仕事の段取りで頭がいっぱいでした。そんな中で、この1枚の紙を管理し続けることが、想像以上にプレッシャーとなりました。私は考えた末、父の枕元に置くのではなく、自分が常に持ち歩くスケジュール帳のポケットに保管し、さらにスマートフォンのカレンダーアプリにも「預り証は手帳の3ページ目にある」とメモを残しました。入院期間中、父の病状に一喜一憂する日々が続きましたが、頭の片隅には常にあの預り証の存在がありました。もし家を空けている間に空き巣に入られたら、もし手帳をどこかに置き忘れたら、そんな不安がよぎりました。結局、父は2週間の入院を経て無事に退院の日を迎えました。退院当日の朝、私は震える手で手帳からあの青い紙を取り出し、窓口へ提出しました。事務の方は手慣れた様子で私の保険証と預り証を確認し、電卓を叩いて計算してくれました。高額療養費制度の利用もあり、最終的な支払い額は8万5400円でした。私は既に10万円を預けていたため、差額の1万4600円がその場で現金で返還されました。同時に、10万円全額についての受領印が押された、正式な医療費領収書が発行されました。この瞬間の安堵感は、父が回復した喜びと同じくらい大きなものでした。初めての経験で戸惑いましたが、病院側がなぜこれほどまでに厳重な管理を求めるのかも理解できました。病院という場所は多くの人が出入りし、中には悪意を持つ人がいないとも限りません。多額の現金を預かる以上、証書という形での厳格なやり取りは、病院と患者の双方を守るためのルールなのです。これから入院を予定している方やそのご家族には、預り金という制度に驚くことなく、事前に現金を準備し、証書を管理するための「定位置」をあらかじめ決めておくことを心からお勧めします。
初めての入院で戸惑った預り金の支払いと管理