呼吸状態の悪化や、哺乳不良といった危険なサインが見られ、RSウイルス感染症で入院となった場合、親御さんは、不安でたまらない気持ちになるでしょう。「病院では、一体どのような治療が行われるのだろうか」「子供は、どんな処置をされるのだろうか」。その不安を少しでも和らげるために、入院中に行われる、基本的な治療とケアの内容について、予め理解しておくことが大切です。まず、知っておかなければならないのは、手足口病などと同様に、RSウイルスそのものを直接攻撃して殺すための、特異的な「抗ウイルス薬」は、現在のところ存在しない、ということです。したがって、入院治療の目的は、ウイルスが自然に体からいなくなるまでの間、お子様が、つらい呼吸困難や脱水症状を安全に乗り越えられるように、専門的な医療ケアで、その小さな体をサポートすることにあります。その中心となるのが、「呼吸管理」と「水分・栄養管理」です。まず、呼吸を楽にするための「呼吸管理」として、最も一般的に行われるのが、「酸素投与」です。鼻に付けた、細く柔らかいチューブから、適切な濃度の酸素を吸入することで、低酸素状態を改善し、呼吸の負担を軽減します。また、気道を狭くしている、粘り気の強い痰を、外に出しやすくするための処置も重要です。鼻や口から、細い管を入れて痰を吸引する「吸引」や、気管支を広げる効果のある薬液を、霧状にして吸入する「吸入療法(ネブライザー)」などが、お子様の状態に応じて行われます。次に、脱水を防ぐための「水分・栄養管理」です。哺乳力が落ちて、口から十分に水分や栄養が摂れない場合は、「点滴(静脈内輸液)」によって、水分や電解質、そして最低限の糖分を、直接血管から補給します。これにより、脱水状態を防ぎ、体力の消耗を最小限に抑えることができます。入院期間は、お子様の重症度や回復のスピードによって異なりますが、一般的には、五日から一週間程度が目安となります。呼吸状態が安定し、酸素投与が不要となり、そして、口から十分に水分やミルクが摂れるようになることが、退院の目安です.病院のスタッフは、お子様が一日も早く元気になるように、二十四時間体制で、専門的なケアを提供してくれます。安心して、医療チームに任せることが、親御さんにとっても、そしてお子様にとっても、最善の選択なのです。