RSウイルスは、非常に感染力が強く、乳幼児が集団生活を送る保育園や幼稚園、あるいは兄弟間での家庭内感染によって、あっという間に感染が広がります。一度感染しても、十分な免疫がつきにくく、生涯にわたって何度も感染を繰り返す、厄介な性質も持っています。大切な赤ちゃんや、家族を、このウイルスから守るためには、その正しい感染経路を理解し、日々の生活の中で、地道な予防策を徹底することが、非常に重要となります。RSウ-イルスの主な感染経路は、二つあります。第一に、「接触感染」です。感染者が、咳やくしゃみを手で押さえ、その手で触れたドアノブや手すり、おもちゃ、あるいはタオルなどに、ウイルスが付着します。その場所に、別の人が触れ、そのウイルスが付着した手で、目や鼻、口といった粘膜を触ることによって、ウイルスが体内へと侵入します。RSウイルスは、プラスチックの表面などでは、数時間にわたって感染力を保つことができると言われています。第二に、「飛沫感染」です。感染者の咳やくしゃみ、あるいは会話の際に、ウイルスを含んだ、目に見えないほどの小さな飛沫（しぶき）が飛び散り、それを、近くにいる人が、鼻や口から吸い込んでしまうことで感染します。これらの感染経路を断ち切るための、最も基本的で、そして最も効果的な予防策、それは「手洗い」と「アルコール消毒」の徹底です。外出から帰った後、トイレの後、そして食事の前には、大人も子供も、必ず石鹸と流水で、指の間や手首まで、丁寧に手を洗いましょう。そして、手が洗えない状況では、アルコールベースの手指消毒剤を活用します。また、家庭内での感染拡大を防ぐためには、家族が頻繁に触れる場所、例えば、ドアノブや、電気のスイッチ、テーブル、リモコン、そして子供のおもちゃなどを、アルコールや、次亜塩素酸ナトリウム（家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの）で、こまめに消毒することも有効です。そして、風邪症状のある家族がいる場合は、可能な限り、赤ちゃんとの接触を避け、マスクを着用し、「咳エチケット」を徹底してください。残念ながら、RSウイルスには、インフルエンザのような、予防接種（ワクチン）は、現在のところ一般的にはありません（早産児など、特定のハイリスク児を除く）。だからこそ、日々の地道な感染対策の積み重ねが、愛する我が子を、重症化のリスクから守るための、最も強力な盾となるのです。