大人のヘルパンギーナにおいて、熱が出ない場合でも、多くの人を最も苦しめるのが、喉の奥にできた、無数の口内炎による、耐え難いほどの激痛です。残念ながら、ヘルパンギーナの原因であるウイルスそのものを殺す特効薬はないため、治療は、このつらい喉の痛みを、いかにして和らげ、体が自然に回復するまでの期間を、乗り切るかという「対症療法」が中心となります。病院では、まず、痛みそのものを抑えるための「解熱鎮痛剤」が処方されます。アセトアミノフェンや、ロキソプロフェンといった成分の飲み薬を、定期的に服用することで、痛みのレベルを、ある程度コントロールすることができます。また、口内炎の炎症を抑え、痛みを緩和するための「うがい薬」や、粘膜を保護するための「トローチ」、あるいは、直接患部に塗るタイプの「ステロイド軟膏」などが処方されることもあります。これらの薬を、医師の指示通りに、正しく使用することが、治療の基本となります。そして、病院での治療と並行して、非常に重要なのが、自宅でできる「セルフケア」です。特に、食事の工夫は、痛みと戦う上で、何よりも大切です。まず、絶対に避けるべきなのが、「熱いもの」「辛いもの」「酸っぱいもの」といった、刺激の強い食品です。これらは、口内炎の傷口に、塩を塗り込むようなもので、激痛を引き起こします。おすすめなのは、喉越しが良く、あまり噛まなくても飲み込める、冷たいものです。例えば、ゼリーやプリン、ヨーグルト、アイスクリーム、冷製スープ、あるいは、冷ましたおかゆや、豆腐などが良いでしょう。水分補給も、脱水を防ぐために不可欠ですが、水がしみる場合は、麦茶や、スポーツドリンク、経口補水液などを、ストローを使って、ゆっくりと飲むと、痛い部分を避けて、水分を摂りやすくなります。また、空気が乾燥していると、喉の粘膜が乾き、痛みが強くなるため、加湿器などを使って、部屋の湿度を適切に保つことも、症状の緩和に繋がります。これらの、地道な工夫とセルフケアが、痛みのトンネルを、少しでも短く、そして楽に通り抜けるための、重要な杖となるのです。
ヘルパンギーナの喉の痛みを和らげる