待ち時間と冷淡な対応に隠された組織的な構造問題
多くの患者が病院の受付に対して抱く不満は、長い待ち時間とそれに対するスタッフの配慮のなさに集約されます。しかし、この現象を個人の性格のせいに帰結させるのは早計です。これは医療提供システムそのものが抱える構造的な欠陥から生じています。日本の医療制度は、フリーアクセスと呼ばれる誰でもどこでも受診できる仕組みを維持していますが、その反面、特定の人気病院に患者が集中しすぎてしまう弊害があります。受付スタッフは、キャパシティを遥かに超えた患者数をさばかなければならず、一人ひとりに丁寧な説明を行う時間は一秒も残されていません。もし一人の患者と長く話し込めば、後続の患者からすぐに怒号が飛びます。このような環境下では、スタッフは感情を排除してシステマチックに動くことが、組織を維持するための唯一の正解になってしまうのです。さらに、病院のIT化の遅れも態度を悪くさせる一因です。紙のカルテや古いシステムを使い続けている病院では、転記や確認作業に膨大な手間がかかり、スタッフは画面や手元の書類を凝視し続けることになります。患者と視線を合わせる暇もないほど、情報の処理に追われているのです。態度が悪いと感じられる対応の多くは、実はスタッフがシステムを必死に回そうとしている必死さの裏返しでもあります。患者側からすれば、自分は一人のかけがえのない患者ですが、受付側からすれば、一日に数百人も訪れる処理対象の一人にならざるを得ないという悲しいミスマッチがここにあります。組織的な余裕がない中で、人間味のある対応を求めることの難しさを、私たちは病院の窓口という最もシビアな場所で突きつけられているのです。