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手汗や足汗、脇汗…部位別で受診科は違う?
多汗症といっても、汗をかきやすい部位は人によって様々です。手のひら(手掌多汗症)、足の裏(足底多汗症)、脇の下(腋窩多汗症)、顔面、頭部など、特定の部位に限定して大量の汗をかく局所多汗症が一般的です。これらの部位によって、受診すべき診療科が変わるのではないかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、どの部位の多汗症であっても、最初に相談すべき基本的な診療科は皮膚科であることに変わりはありません。皮膚科は皮膚および皮膚付属器(汗腺も含む)の専門家であり、多汗症全般の診断と治療を行っています。手の汗で悩んでいる方も、足の汗で困っている方も、脇の汗じみが気になる方も、まずは皮膚科を受診して相談するのが最も適切なアプローチです。皮膚科では、問診でどの部位に、どの程度の汗をかくのか、日常生活への支障などを詳しく確認します。そして、原発性多汗症(特定の原因疾患がないもの)なのか、続発性多汗症(他の病気や薬剤が原因のもの)なのかを鑑別します。続発性が疑われる場合は、原因疾患の治療が優先されるため、必要に応じて内科などの他科へ紹介されることもあります。原発性多汗症と診断された場合、治療法は部位や重症度によって選択されます。例えば、手のひらや足の裏の多汗症には、塩化アルミニウム外用液やイオントフォレーシス療法がよく用いられます。脇の多汗症には、これらの治療法に加えて、ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)の局所注射が保険適用となっており、非常に効果的です。顔面や頭部の多汗症に対しては、外用薬や内服薬(抗コリン薬など)が検討されることがあります。ただし、内服薬は全身に作用するため、口の渇きや便秘などの副作用が出ることがあり、医師との相談が不可欠です。このように、治療法は部位によって適したものがありますが、診断と治療方針の決定は皮膚科医が行います。重症で、これらの保存的治療で効果が不十分な場合には、胸部外科や呼吸器外科で交感神経遮断手術(ETS)が検討されることもありますが、これは主に手のひらや脇の多汗症が対象で、顔面や頭部の多汗症にも適応されることがあります。しかし、手術には代償性発汗のリスクが伴うため、最終的な手段として慎重に検討されます。したがって、どの部位の汗で悩んでいても、まずは皮膚科で専門医の診察を受け、適切なアドバイスと治療法の提案を受けることが重要です。